生き物でみる庭、植栽で終わらない庭…自然な庭 つくば

冬のあいだ静かだった庭に鮮やかな緑色でざわざわとしてくると、裸同然だった空間に “ おもて と かげ ” ができ、その “かげ” に生き物が動き出す。 しかし、それを不安に感じる人もいるのだろう。… 知らない生き物が這いまわり、隠れながらも庭中の草花を食べ、手入れしている指を毒針で刺し、隙あらば家の中まで入り込んでくる。…そんな想像に悩まされる方々は少なくない。ここちよいはずの “自然” と自分なりの快適さのせめぎ合いに鬱々となったりする。

写真は、つくば市内の庭から採集した昆虫の一部を標本にしたもの。衝突板トラップのようなものを衝突版トラップを使い、つくばの庭で採集された昆虫つくっての採集だったので、実際はこの何十倍もの虫がトラップに落ちた。特にハエ、ハチの類いは多いが、標本にし易いものだけを拾い上げマウントした。場所は、つくば市南部、雑木林や田圃が接している好条件なので、街なかの住宅地とは、かなり違う。

庭で見られる生き物はそのまま、庭と、その周囲の環境をあらわしている。お庭づくりに植物はもちろん主となるのだが、少し時間が経てば、そこに出現する生物から、その状態、周囲とのつながりが見えてくる。 ある昆虫が生きていくには、当然餌が要る。餌は葉っぱであったり、菌(キノコ)であったり、他の昆虫であったり。庭の環境が複雑で植物の種類が多ければ、それだけ多くの生物が生きている。飾りもののような植物だけで終わらず、自然に近づく庭からは、私達や子ども達に、知的な刺激を受ける機会を与えてくれるだろう。知らない草、見たことない花、そして聞いたことのない名前を持つ虫。好奇心しだいでは、それらの草花、昆虫、小動物を調べるだけでも、学校では教えてくれない自分だけの体験が可能だ。画像だけの絵合わせで種名を調べることに疑問を持ち、細部の形態を解説で読み、似たような種類との差異を覚えていくあいだに、子どものほうが先に庭の生き物たちに詳しくなるだろう。

庭のプランを相談するときに、カーポートや門柱、フェンスの話しより、植物や虫の話しがたくさん出てくると怪訝に思うかも知れない。それは庭を考えるときに、少しでも健全な環境を考えようとするからである。 ( … もちろん、虫が現れ難い庭も考えられますよ) 果たして、そんな自然が豊富な庭を持てるならば、子どもたちが遊んでいるうちに、または庭の整備をするパパママたちも、いつのまにか、菌~植物~昆虫、そして自分たちまで全てが繋がっているという ” 生態系” を、知識としてではなくじかに感じることができる。それもリヴィングから徒歩10秒程度で!

※ もし、お客様のところで毛虫が出たとしても、ニハソノはいきなり殺虫剤や消毒薬を撒いたりしません。きちんとその虫の種類を伝え、どれぐらい実害があるのかをお客様に説明します。(しかし不快!というのもありますね) 不用意に殺虫剤や消毒薬を撒くことで、その虫を食べてくれる天敵や土のなかの微生物まで駆除してしまうことになり、ますます次の被害が発生し易くなることがあるのですよ。

◇ 2023, 0621 修正


ニハソノ 樹木医 2723号、ビオトープ1級管理士、森林インストラクター
子どもといっしょに楽しむお庭づくり