「雑草礼賛」
食べられる雑草について 1

セリについて

 正月気分の中、野菜売場に並ぶ「春の七草」をもとめただろうか。おせちのローストビーフが残っているのに、何故この日に突然葉っぱを食さなくてはいけないのか云々...はネットで探せば大凡掴めるのでここには記さない。春の七草ぐらいその辺で摘むわ〜としても、冬の最中にそうそうは見つけることはできない。節句を定めた頃の暦は「太陰暦」だった筈だからで、時間がひとつきほどズレている。七草のひとつ芹(セリ)は田圃があればだいたい生えているモノだ。

 芹は田圃の畦で摘める。最近、冬の田圃は水を抜いてしまうので、この湿地に生える草を見つけ難くなった。山間の奥や休耕田で水が絶えず入るところにはたいていあるものだ。売っているものも、野生のものも噦種(しゅ)は同じ。日本に芹属は Oenanthe javanica の一種しかない。「氏より育ち」とはよく言ったもので、同じ種(しゅ)でも、野生のモノは茎が紫色でえぐいくらいに香りが強い。七草として食さなくても、さっと湯に通しお醤油と胡麻油とお酢のドレッシングで食べるのが簡単だ。マヨネーズも良いが、それも自作してしまおう。マヨネーズは自作するといかに身体に悪そうかが実感できる。卵の黄身、サラダ油(オリーブ油でも良い)、塩、お酢、これだけ。少しづつ油を入れながらカシャカシャと撹拌機で混ぜていく。そう九割以上が油だと気づく。

 他には「なべ焼きの鴨と芹とは二世の縁」という川柳があるくらいなので、今なら(11月15日〜2月15日)ちょうど狩猟期も重なって互いが引き立つ食べ方があるらしい。

芹 セリ

 野外での採集時、間違いやすいものに「ドクゼリ」がある。同じように湿地に生え、同じ科でもあるが、芹の香りはしない。どちらか不安なときは根っこの部分を掘ってみよう。ドクゼリはタケノコのように内部が段々になっているはずだ。

 気長に待つことができるならば、育てる楽しみもこの草にはある。購入してきた芹を少しだけ食べないで庭に植えてみよう。たいていの家には湧水や遣り水はない。だけどなるべく多くの水を朝晩あげるだけでも庭の隅で育つ。夏の大きさといったら厚かましくさえ感じるぐらいだ。

 さらにいくつか野外採集時に気をつけることがある。湿地に生えているので、長靴は必須だ。池や沼でないため甘く考えやすいが、うっかり足を入れた地面が想像以上に軟式で、あっというまに膝まで潜り込むときがある。あっと思ったときは遅く、しかも抜こうとしてもう片方の足に力が入ると、こんどはその足まで深く潜り込んでいくときがある。あなたが一人で採集に出かけて行ったとしたら悲劇だ。なぜなら深く潜り込んだ両足は方々からの泥でもう動かす事さえできない。

 ...遠くで見ている誰かが居れば、ここからは「こんなことは想定内」として落ち着いて行動する振りをせねばならぬ。もちろん笑顔でだ。... 両足が深みにはまり、あきらめたあなたは長靴から足を抜く事を思いつく。そしてミズグモのように湿地の表面を走るんだ、素足で。どこからか大きな板切れを見つけてきて、そこに乗って長靴を回収しよう。

 そしてヒルに気をつけねばならぬ。幸運にもその場で血を吸われずに済んでも、芹にくっついてキッチンまで連れて来ると野外で出会うよりも気分がわるい。どう処理するか。そのままキッチンで流しても排水溝の受けからのぼってきたりする。紙でくるんでもゴキブリのように簡単にはつぶれない。軟らかそうに見えたその体が、実はコリコリした堅さだということにもう一度驚く筈だ。

 芹には民間伝承の薬効もある。茹でて食べるだけでも神経痛、リュウマチに効くそうだ。生の芹を大量に採って、まめしぼりなどを使って抽出した搾り汁を飲むと子供の解熱にも効くらしい。

 上記のように、ハイキングがてらに摘んで、美味しいから食べる。それだけでもとても健康にも心にも良さそうだ。

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